コラム

犬とネコの避妊・去勢手術は必要?メリット・デメリットと推奨時期を解説

犬や猫を家族に迎えたとき、避妊・去勢手術を受けさせるべきか悩む飼い主さまは少なくありません。手術には、望まない繁殖を防ぐだけでなく、特定の病気の予防や発情に関連する行動の軽減といったメリットがあります。一方で、全身麻酔のリスクや術後の肥満、犬種によっては関節疾患などへの影響も考慮する必要があります。今回は獣医師の視点から、犬とネコの避妊&去勢手術の是非について、メリット・デメリット、推奨される手術時期、犬種・猫種による違いを解説します。

犬とネコの避妊・去勢手術とは?

避妊・去勢手術は、生殖能力をなくすために行う外科手術です。メスでは卵巣摘出術や卵巣子宮摘出術、オスでは精巣摘出術を行います。

手術の目的は、望まない繁殖を防ぐことだけではありません。生殖器に関連する病気の予防や、発情に伴う行動の軽減も期待できます。ただし、犬と猫では性成熟の時期や病気の特徴が異なるため、それぞれに適した判断が必要です。

避妊・去勢手術のメリット

望まない妊娠・出産を防ぐ

避妊・去勢手術の大きな目的のひとつは、望まない繁殖を防ぐことです。特に猫は早ければ生後4〜5か月齢で性成熟し、妊娠する可能性があります。完全室内飼育であっても、脱走や同居動物との接触によって妊娠する可能性はゼロではありません。

メスの生殖器疾患や乳腺腫瘍のリスクを減らす

避妊手術によって卵巣を摘出すると、卵巣疾患を予防できます。また、卵巣と子宮を摘出する方法では、子宮蓄膿症の発症を予防できます。子宮蓄膿症は、細菌感染などによって子宮内に膿がたまる病気で、重症化すると腎障害や敗血症を引き起こし、命に関わることがあります。

さらに、早期の避妊手術は乳腺腫瘍のリスク低下につながります。特に猫の乳腺腫瘍は悪性である割合が高いため、予防の観点からも重要です。犬についても予防効果が期待されますが、手術時期によるリスク低下の程度については科学的な不確実性があり、個体ごとの判断が必要です。

オスの生殖器疾患を予防する

去勢手術では精巣を摘出するため、精巣腫瘍を予防できます。犬では、男性ホルモンの影響を受ける良性前立腺肥大や一部の肛門周囲腺腫、会陰ヘルニアなどについても、発症リスクの低下や治療上のメリットが期待できます。

ただし、前立腺の病気すべてを予防できるわけではありません。前立腺癌など、去勢手術による予防効果が確立していない疾患もあります。

発情に関連する行動を軽減する

避妊・去勢手術によって、発情に伴う鳴き声や脱走、マウンティング、尿スプレーなどの行動が軽減する可能性があります。特に猫では、オスの尿スプレーや発情中のメスを求める行動、ケンカなどの減少が期待できます。

ただし、攻撃行動や不適切な排泄には、恐怖や不安、環境要因、学習なども関係します。すべての問題行動が手術によって改善するわけではありません。

避妊・去勢手術は、望まない繁殖を防ぐだけでなく、特定の生殖器疾患の予防にも役立ちます。ただし、予防できる病気や効果の程度は、手術方法や性別、手術時期によって異なります。

避妊・去勢手術のデメリットと注意点

全身麻酔や手術に伴うリスク

避妊・去勢手術は全身麻酔を伴う外科手術です。健康な若齢動物では安全性の高い手術ですが、出血、感染、麻酔に伴う合併症などのリスクはゼロではありません。

手術前には身体検査を行い、必要に応じて血液検査や画像検査などで健康状態を確認します。年齢や持病、体格などを踏まえ、適切な麻酔管理と術後のケアを行うことが大切です。

術後は太りやすくなることがある

避妊・去勢手術後は、エネルギー要求量の変化などにより、以前と同じ食事量でも体重が増えやすくなる場合があります。肥満は糖尿病や関節疾患などのリスクにつながるため、術後は食事量やフードの種類を見直しましょう。

定期的に体重とボディコンディションスコア(BCS)を確認し、適切な食事管理と運動を続けることが重要です。

尿失禁や関節疾患などのリスク

避妊手術後のメス犬では、尿道括約筋機能不全による尿失禁が起こることがあります。特に中型犬・大型犬では注意が必要です。

また、一部の犬種では、骨格の成長が十分に進む前の早期手術と、股関節形成不全や前十字靱帯断裂、一部の腫瘍などとの関連が報告されています。こうした影響は犬種や性別、手術時期によって異なるため、すべての犬に同じ判断を当てはめることはできません。

避妊・去勢手術の推奨年齢は?

適切な手術時期は、犬と猫で考え方が異なります。年齢だけでなく、性成熟の時期、体格、成長段階、健康状態、生活環境などを総合的に判断しましょう。

犬の場合:体格や犬種によって検討する

小型犬では、生後6か月前後が手術時期のひとつの目安になります。ただし、初回発情の前後や健康状態、飼育環境などによって適切な時期は変わります。メス犬では発情周期も考慮して判断します。

一方、大型犬・超大型犬では、骨格や関節の成長が長く続くため、早期手術の影響を考慮し、成長が進むまで待つことがあります。犬種や性別によっては、生後12〜24か月程度まで手術を待つことが検討されますが、一律の基準ではありません。

猫の場合:生後6か月齢までが目安

猫では、生後6か月齢までの避妊・去勢手術を推奨しています。猫は早い時期に性成熟するため、初回発情や望まない妊娠を防ぐ観点から、早期の手術が一般的です。

メス猫では、早期の避妊手術によって乳腺腫瘍のリスク低下が期待できます。オス猫では、尿スプレーなどの行動が習慣化する前に手術を行うこともメリットになります。ただし、体重や発育状態、持病の有無などを確認し、具体的な時期を決定します。

犬種・猫種による手術時期の違い

犬では、犬種や成犬時の体格によって、避妊・去勢手術が健康に及ぼす影響が異なることが報告されています。特に大型犬では、成長段階と関節疾患などのリスクを考慮することが重要です。

犬種・体格手術時期を考える際のポイント
チワワ、トイ・プードルなどの小型犬比較的早い時期に手術を検討しやすい。発育や健康状態も確認する。
ラブラドール・レトリーバー性別や手術時期による関節疾患などへの影響を考慮する。
ゴールデン・レトリーバー関節疾患や一部の腫瘍との関連を踏まえ、慎重に判断する。
ジャーマン・シェパード成長段階や関節疾患のリスクを考慮する。
ロットワイラーなどの大型犬骨格の成長や犬種特有の疾患リスクを踏まえて検討する。

ただし、上記は判断時の参考であり、犬種だけで適切な手術時期が決まるわけではありません。性別、体格、生活環境、繁殖の予定、個体の健康状態などを踏まえて判断する必要があります。

猫では、犬ほど猫種ごとの手術時期の違いは一般的に重視されていません。雑種猫を含め、多くの猫で生後5か月齢までの手術が目安となります。ただし、持病や先天性疾患などがある場合は、全身状態を踏まえて個別に判断します。

避妊・去勢手術は必ず受けるべき?

避妊・去勢手術には、望まない繁殖を防ぐことに加え、特定の病気の予防や発情に関連する行動の軽減など、多くのメリットがあります。一方で、全身麻酔のリスクや術後の肥満、一部の犬で注意したい尿失禁や関節疾患など、考慮すべき点もあります。

大切なのは、手術を受けるかどうかだけでなく、愛犬・愛猫にとって適切な時期を選ぶことです。繁殖の予定、飼育環境、犬種・猫種、年齢、持病などを総合的に考え、飼い主さまと獣医師が相談しながら決定しましょう。

この記事のまとめ

  • 避妊・去勢手術は、望まない繁殖を防ぎ、特定の生殖器疾患の予防にも役立つ。
  • 全身麻酔のリスクや術後の肥満、一部の犬で注意したい尿失禁・関節疾患なども考慮する。
  • 犬は体格や犬種、性別、成長段階によって適切な時期が異なる。猫は生後5か月齢までがひとつの目安となる。
  • 手術の必要性や時期は、愛犬・愛猫の健康状態や生活環境を踏まえて獣医師と相談することが大切。

避妊・去勢手術についてお気軽にご相談ください

手術のメリットやリスク、適切な時期は、犬種・猫種や健康状態によって異なります。ブリス国立動物病院では、愛犬・愛猫それぞれに合った選択ができるようご相談を承っています。

監修した獣医師
Veterinarian / 獣医師
獣医師 萩野 純子

ブリス国立動物病院の獣医師。犬と猫の健康管理や病気の予防について、飼い主さまにわかりやすい情報をお届けします。

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