皆さまこんにちは、獣医の松井です。
今日取り上げるのは猫の口内炎です。
口内炎といえば、私達の口内にもたまにできるので、なんとなく痛みは想像できるかと思います。
でも、猫さんの口内炎は私達のそれとは、比にならないほど痛々しく、見ていても辛くなる程です。
この写真は長年口内炎を患い、口の痛みのため充分食事ができず、体重も一時期かなり減っていたという猫さん。
歯肉全体の赤みと喉の奥の方まで腫れていています。

痛み止めや抗生剤などの内科治療でなんとか状態持ち直すも、痛みのストレスから自分の毛をむしる(抜毛症状)も出ていました。
猫の口内炎は原因が複雑なのですが、口の中の様々なウィルスや細菌(歯面に付着してる歯垢細菌)に対して、猫の体が過剰に反応することで、強い免疫反応を呈し、炎症をおこすためと考えられています。
治療といえば、抗菌薬や消炎剤などの内科治療によって、症状を緩和させることは可能です。ただ治癒が難しく、現在最も効果的な治療は歯垢や歯石の除去を含めた抜歯です。
抜歯は人と異なり、猫さんの場合、全身麻酔が必要であることや、歯を抜く数がとても多いことから負担も懸念され、口内炎だからといっていきなり抜歯になることは少ないのですが、最終手段として行うことがあります。
抜歯というと、歯がなくなっても大丈夫なのかしらという、飼い主さんからのご質問があります。
基本的には大丈夫です。猫は人の歯と機能が異なります。
例えば、猫の臼歯(奥歯)は咀嚼機能が全くなく、飲み込める大きさのドライフードやウェットフードを与えることで日常生活で困ることはありません。
抜歯には全臼歯抜歯(前歯と犬歯以外、奥歯を全部抜く方法)と全顎抜歯(全ての歯を抜く方法)があります。
どちらがより効果的かについては、以下のような研究報告があります。
下の図は、全臼歯抜歯(奥歯を全部抜く処置)後における短期および長期的な評価です。

日本獣医師会誌63.2010.48-51. CLINIC NOTE2019october.より
抜歯後に短期間で完治したネコは長期にわたって完治を維持し、それ以外のネコも多くは改善がみられました。そのこ達を長期観察していくと、中には完治したり再び悪化するグループがいました。そして長期的な経過観察をしても結局改善が見られなかったネコに、全顎抜歯を行ったところ、80%が完治しています。
つまり、2/3は1ヶ月という期間で良好な結果が得られ、それ以外の子も最終的に全顎抜歯をすることで、良好な結果が得られるということです。
手術後の痛みなどの負担は一過性にありますが、治療のメリットはとても大きいと思います。
ご紹介したネコさんも、このままずっと内科治療を続けるのは難しいという理由から、まずは全臼歯抜歯を行いました。
手術後1~2ヶ月経過して、まだ口腔内の赤みはありますが、内服薬の投与なしでも、もりもりご飯を食べて、機嫌もいいそうです(^ν^)
この状態を維持できるか、今後も経過をみていきたいと思います(*・ω・)ノ