腫瘍

犬の乳腺腫瘍🐕

今回はメス犬で最も一般的な腫瘍の一つ、”乳腺腫瘍“を取り上げたいと思います。

犬の乳腺は、左右対称で全部で10個あります。まれに8個や12個のこもいます。犬の乳腺腫瘍の7割くらいはお腹の下の方、つまり第4~5乳腺に発生します。

犬の乳腺にできたしこりは、全てが悪いものではなく、良性と悪性の比率はだいたい50%くらいです。

また、半分以上のこは多発性といって、何箇所か同時に乳腺内しこりができたりもします。

私も以前、年1回の健康診断で、自分の乳腺にしこりが見つかり焦ったことがありました。

担当医師は病理検査を積極的にすすめてきませんでした。人の場合は8~9割は良性らしいのですが、もし悪性だったらと不安がつのり、こちらから病理検査をお願いして実施してもらいました。

検査当日、自分が毎日使っていたあの太い生検針、全く同じものを手に握り、医師が登場した時はかなり緊張しましたΣ(゚д゚lll)。

局所麻酔をしてくれるので痛みはあまりないのですが、長くて、とっても太い針を乳房に刺すわけですから、かなりの恐怖です。それでも看護師さんが優しく声がけして下さって、なんとか落ち着いて検査は無事終了。

様々な検査や処置で犬や猫が緊張したり怖がったりする気持ちや、患者さんへの声がけは改めて大事だなと思ったので、いい勉強になりました。

私の病理検査結果は良性とわかり、ほっとしましたが、その後も毎年検査は欠かさず受けています。

犬の場合も早期発見、早期治療が功を奏します。しこりのサイズが3cm以下で、サイズがより小さい程、予後がいい傾向であることも長年の研究で明らかになっています。犬は毛に覆われていますから、しっかり触らないとわからないため、普段からブラッシングのお手入れなどを通して、留意することがやはり大切ですね。

犬の乳がんと人の乳がんを比較すると似ている所はいくつかあります。

例えば、人にはBRCAという遺伝子変異が関係する乳がんがあります。犬ではスウェーデンの研究が有名ですが、一部の犬種にもこのBRCA遺伝子異常の関与が示唆されています。

またエストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンの影響が腫瘍の増殖に関係しているという、つまりホルモン依存性である所は同じですが、犬の場合、悪性度が高いほどホルモン非依存性となっていることがわかっており、ホルモン治療自体は標準治療として確立はされていません。

また、HER2(受容体型チロシンキナーゼの一つ)という悪性腫瘍の増殖に関係する治療標的とされているものがあります。

これが多く発現しているタイプの乳がんは、分子標的薬がよく効く場合があります。

犬にも乳がんを始め色んな悪性腫瘍にこのHER2が発現していることがわかっています。

去年、犬のHER2を標的とする抗体薬に抗がん剤を結合させた新規治療薬候補が発表されました。因みにこれは骨肉腫の治療で注目されています。でも乳がんをはじめ、色んな悪性腫瘍に対して応用範囲の拡大が、今後の研究によって期待されています。

より多くの治療選択肢が増えて、乳がんで苦しむ犬や猫が少しでも減ることを願い、私も日々診療を続けています(*´-`)

因みに、猫さんの乳がんは犬や人と全く性質が異なるため、また回を改めたいと思います。

Matsui

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