犬やネコと暮らすうえで、感染症から大切な家族を守るために重要なのが「ワクチネーション」です。「子犬・子猫は何回ワクチンを打てばいい?」「5種と7種はどちらがいい?」「室内飼育のネコにも必要?」「ワクチンは毎年必要?」など、疑問を持つ飼い主様は少なくありません。ワクチンは、単純に「種類が多いほど安心」「毎年すべて接種すればよい」というものではありません。年齢、生活環境、感染症への曝露リスク、過去の接種歴や副反応などを考慮して、その子に必要な予防を選ぶことが大切です。

子犬・子猫のワクチンはなぜ複数回必要?
生まれたばかりの子犬・子猫は、母犬・母猫から受け取った「移行抗体(MDA)」によって、しばらくの間感染症から守られています。しかし、移行抗体が減っていく時期には個体差があります。
移行抗体がまだ十分に残っていると、接種したワクチンの働きが妨げられることがあります。一方で、移行抗体がなくなった後は、ワクチンによる免疫が十分に成立していない「感染リスクの窓」が生じる可能性があります。
そのため、2024年のWSAVA(世界小動物獣医師会)ガイドラインでは、犬・ネコともに生後6~8週齢頃からコアワクチンを開始し、2~4週間間隔で接種を続け、最後の接種を16週齢以降に行うことが推奨されています。
「3回打ったから終了」ではなく、「16週齢以降の接種が含まれているか」が重要です。初回接種の時期によって必要な回数は変わるため、回数だけで判断しないようにしましょう。
生後4か月までの基本的なイメージ
| 時期 | ワクチネーションの目安 |
|---|---|
| 生後6~8週齢 | コアワクチンの初回接種 |
| その後2~4週間ごと | 移行抗体の影響を考慮して追加接種 |
| 生後16週齢以降 | 初年度の重要なコアワクチン接種 |
| 生後26週齢以降 | 必要に応じて追加接種や抗体検査を検討 |
さらにWSAVAでは、生後16週齢以降の接種を受けても一部の子で移行抗体の影響が残る可能性を考慮し、生後26週齢以降の追加接種を推奨しています。生後20週齢以降の抗体検査を活用する方法もあります。
コアワクチンとノンコアワクチンとは?
ワクチンを考えるときに知っておきたいのが、「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」という考え方です。
犬のコアワクチン
犬では、主に犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス、犬パルボウイルスを予防するワクチンが、世界的にコアワクチンとされています。狂犬病ワクチンは、流行地域では重要なコアワクチンであり、日本では法律上の接種義務があります。
ネコのコアワクチン
ネコでは、猫汎白血球減少症ウイルス(FPV)、猫ヘルペスウイルス(FHV-1)、猫カリシウイルス(FCV)が基本となるコアワクチンです。一般的な「3種混合ワクチン」は、この3つを対象としています。
完全室内飼育のネコであっても、感染症のリスクがゼロになるわけではありません。病原体が人の衣服や靴などを介して持ち込まれる可能性もあるため、室内飼育だからワクチンは不要、と一律に考えることはおすすめできません。
ノンコアワクチンは生活環境から考える
ノンコアワクチンは、すべての犬・ネコに一律に必要というものではなく、生活環境や地域の感染症リスクに応じて選択します。
- 犬:川や湖、山、田畑などに行く機会が多い → レプトスピラ症ワクチンを検討
- 犬:ホテルや保育園など他の犬と接触する機会が多い → 呼吸器感染症への対策を検討
- ネコ:外に出る、他のネコと接触する → FeLV(猫白血病ウイルス)ワクチンを検討
- ネコ:ペットホテルなど高リスク環境を利用する → 接種時期や追加接種を検討
特に犬のレプトスピラ症は、人にも感染する人獣共通感染症です。地域や生活環境によっては、積極的な予防を検討する価値があります。
5種・6種・7種・8種・10種……何種を選べばいい?
「5種と7種ではどちらがいいですか?」という質問はよくありますが、「○種なら正解」というものではありません。
犬の混合ワクチンは、製品によって含まれる抗原が異なります。「5種」「6種」「7種」「8種」「10種」という数字だけで判断せず、そのワクチンで何の感染症を予防できるのかを確認することが大切です。
| 生活環境 | ワクチン選択の考え方 |
|---|---|
| 室内中心・一般的な散歩 | コアワクチンを基本に検討 |
| 川遊び・キャンプ・山歩き | レプトスピラ症など曝露リスクを考慮 |
| 多くの犬と接触する | 呼吸器感染症への対策も検討 |
| 海外旅行・地域をまたぐ移動 | 移動先の感染症リスクや入国条件を確認 |
また、ワクチンは「種類を増やせば増やすほど良い」というものでもありません。その子に必要な感染症を考え、必要性とメリット・デメリットを獣医師と相談して選択しましょう。
ワクチンは毎年接種するべき?
ここも飼い主様が迷いやすいポイントです。2024年WSAVAガイドラインでは、適切に免疫が成立した犬・ネコの一部のコアワクチンについて、必要以上に頻繁な接種を行わない考え方が示されています。
例えば、低リスクの成猫では、コアワクチンを3年ごと、またはそれ以上の間隔で追加接種する考え方があります。一方、他の動物と接触する機会が多いネコなどでは、より頻繁な追加接種を検討する場合があります。
犬でも、コアワクチンとレプトスピラなどでは免疫の持続期間や推奨される接種間隔が異なります。さらに、日本では狂犬病予防法により、犬の狂犬病予防注射は年1回受けさせることが飼い主様の義務です。
「毎年ワクチンを打つ」より、「毎年健康診断を受け、その子に必要なワクチンを見直す」と考えると分かりやすいでしょう。
ワクチンの副反応・アレルギーにも注意
ワクチンは安全性の高い予防医療ですが、接種後に一時的な副反応がみられることがあります。
- 元気がなくなる
- 食欲が落ちる
- 発熱
- 注射部位の腫れや痛み
頻度は低いものの、アナフィラキシーなどの重いアレルギー反応が起こる可能性もあります。顔の腫れ、嘔吐、下痢、強いかゆみ、呼吸が苦しそう、ぐったりするなどの症状がみられた場合は、すぐに動物病院へ相談してください。
過去にワクチン接種後に強い副反応があった場合は、必ず獣医師に伝えましょう。ワクチンの種類や接種する内容を見直したり、接種後の院内での観察時間を長くしたりするなど、その子に合わせた対応を検討できます。
犬とネコのワクチネーションで大切なこと
- 子犬・子猫は生後16週齢以降までコアワクチンを接種する
- 「何種混合か」だけではなく、何の感染症を予防できるか確認する
- 生活環境や他の動物との接触状況からノンコアワクチンの必要性を考える
- 室内飼育でも感染症のリスクが完全になくなるわけではない
- 年1回の健康診断でワクチンの必要性を見直す
- 過去に副反応があった場合は必ず獣医師に伝える
よくある質問
室内飼育のネコにもワクチンは必要ですか?
完全室内飼育でも感染リスクがゼロになるわけではありません。猫汎白血球減少症、猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスなどのコアワクチンについて、年齢や健康状態、生活環境を考慮して接種を検討します。
子犬・子猫は3回ワクチンを打てば終わりですか?
必ずしもそうではありません。重要なのは回数だけではなく、最後のコアワクチン接種が生後16週齢以降になっていることです。初回接種の時期によって必要な回数は異なります。
7種や10種など、種類が多いワクチンのほうが安心ですか?
種類が多ければ必ず良いというわけではありません。散歩の範囲、川や山に行くか、他の動物との接触があるかなどを考慮し、その子に必要な感染症を予防できるワクチンを選びます。
ワクチンは毎年すべて接種したほうがいいですか?
ワクチンによって推奨される接種間隔は異なります。毎年の健康診断で、年齢や生活環境、過去の接種歴などを確認し、その時点で必要なワクチンを獣医師と相談することが大切です。
ワクチンを打った後、元気がありません。大丈夫ですか?
軽い元気消失や食欲低下などが一時的にみられることがあります。ただし、顔の腫れ、繰り返す嘔吐、呼吸困難、虚脱などがある場合は重い副反応の可能性があるため、すぐに動物病院へご相談ください。
この記事のまとめ
- 子犬・子猫では生後16週齢以降のコアワクチン接種が重要です
- コアワクチンとノンコアワクチンを分けて考え、生活環境に合わせて選択します
- 「5種・7種・10種」などの数字だけではなく、予防できる感染症を確認しましょう
- 毎年すべてのワクチンを接種するのではなく、年1回の健康診断で必要性を見直すことが大切です
- 過去にワクチンで副反応があった場合は、必ず獣医師へ伝えましょう
ワクチネーションは、「できるだけ多く接種する」ことが目的ではありません。犬やネコの年齢、生活環境、他の動物との接触、地域の感染症リスク、過去のワクチン歴や副反応などを総合的に判断し、その子に必要な予防を適切なタイミングで行うことが大切です。
なお、犬の狂犬病予防注射は混合ワクチンとは別に考える必要があります。日本では狂犬病予防法により、犬の飼い主には年1回の狂犬病予防注射が義務付けられています。
ワクチンについて気になることはありませんか?
「何種のワクチンが必要?」「前回のワクチンから間隔が空いてしまった」「副反応が心配」など、気になることがあればお気軽にご相談ください。

